迷医 伊良部による怪治療 #イン・ザ・プール

イン・ザ・プール (文春文庫)

イン・ザ・プール (文春文庫)

イン・ザ・プール 奥田英朗(おくだ ひでお)

得体の知れない精神科医・伊良部氏が奇妙な精神的状況に陥った人たちを解決していく短編集。アニメ化もされている作品であり、このシリーズの2作目である空中ブランコ直木賞を受賞されています

全ての話にカタルシスを感じる、というわけではなく、ちょっと腑に落ちない部分があったりもします。ですがそれも依頼人いわく、人を深刻にさせない天性のキャラクターである伊良部氏が救ってくれます。多分

この伊良部先生、どこまで本気で治療をしてくれているのか全く分からないのがこの作品の特徴になっています。まぁ、何事も考え過ぎないのがいいという事なのだとは思われますが

一番好きなエピソードは強迫神経症に陥ったルポライターを患者にした「いてもたっても」です。

ノックをすると、「いらっしゃーい」という、まるで旅館の呼び込みのような明るい声が中から聞こえた。ドアを開け、診療所に入る。一人掛けのソファに太った色白の中年男がいて、満面の笑みで義雄を出迎えた。 「さあ注射、いってみようかー」両手を広げ、腰を浮かしかけている。 「ここんとこ、上の連中が患者を回してくれなくてさあ。うちら、もう二週間も注射打ってないんだよね」太っちょの医者が鼻の穴を広げている。「まったく内科は融通が利かないんだかよなあ。風邪はすべて心身症にしろって言っているのに」 義雄は呆気にとられた。なんだ、この男は?白衣の名札には「医学博士・伊良部一郎」とあった。 「マユミちゃーん、今日は血管注射でいこうか。いちばん太いやつ」 その声に、カーテンの向こうから、やけに肉感的な若い看護婦が現れた。態度は実に無愛想だ。だるそうに首筋を掻いている。 「いやあ、うれしいなあ。今週患者が来なきゃ、上野公園でイラン人相手に出張診療でもしようかと思ってたよ」 伊良部という医者が一人でぶつぶつ言っていた。義雄はなんのことだかまるでわからない。あっという間に用意がなされ、義雄は左腕の静脈に懐中電灯ほどはありそうな太い注射を打たれることになった。 伊良部が、針を皮膚に刺さる様子を食い入るように見ている。顔全体を赤くし、鼻の穴をひくひくさせていた。 「痛ててて」義雄が思わず声をあげる。太い注射はさすがに痛かった。 看護婦を見る。仏頂面でガムをくちゃくちゃ噛んでいた。白衣にはスリットがはいっていて、色艶もよい太ももが露わになっていた。 ここは......病院か?不意に現実感が希薄になる。 「当分、通院ね」伊良部が相好をくずして言った。「診察料、安くしとくからさ」

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また記事になったホームレス詩人がわいせつを働いた事に対して 「その男を捕まえて例の病院に火炎ビンを投げさせよう」などといったり、 向かいの病院を腐すだけ腐して最後に、うちもそうなんだけど、と発言したりして面白い、というより只々、めちゃくちゃですね

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どの患者さんも深刻ではあるものの、読者まで奈落に引きずり込まれる程ではなく、どの話からでも気軽に読めるようになっています

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