若い読者のための世界史

若い読者のための世界史(上) - 原始から現代まで (中公文庫)

若い読者のための世界史(上) - 原始から現代まで (中公文庫)

若い読者のための世界史 エルストン・H・ゴンブリッチ

ユダヤ人の家庭に生まれた美術史家が子供に読み聞かせる事を目的として書かれた本ではあるのですが、それゆえ世界史を詳細な固有名詞を最小限にしながら、通り一遍に勉強し直すことには向いています

ですが西洋中心の世界史、西欧から見た歴史にもなっています。特に古代メソポタミア文明エジプト文明には非常に克明に記されているにもかかわらず、古代中国文明は本当にご挨拶程度にしか記されていません。そういう趣旨の本だと割り切る必要があります(あと儒教道教に対しての認識は私でもおかしいと思うレベルなのですが、西欧人の美術史家に正確に理解しろというのも無理があるのかもしれません

また美術史家ということもあり、美術方面から世界史を見ているのも特色になっています。やはりというか古代ギリシャ文明に対しての思い入れの強さには、欧米文化の母体への憧憬を見る思いです(この手の方たちに現在のギリシャに対しての率直な感想を聞いてみたいですね

以下私が気になったところを抜粋していきます

その嵐ははるか遠くの歴史の破壊者 秦の始皇帝が築いた長城の近くで生まれた。もはや中国へ侵攻のできなくなったアジア草原の騎馬民族は、新しい獲物をもとめて西へ向きを変えた。フン族である。西方の人々は、未だそのような民族を見たことがなかった。切れ長の目と顔に醜いあばたを持つ小さな黄色の人間。彼らは、まさに半人半馬の怪物であった

凄い......(^^;;

また真実か疑わしいと著者が感じているが本に記したいと思うエピソードは「〜と思った人たちがいたことは事実である」という書き方をしていて、それは卑怯なのではと思いましたね

トゥール・ポワティエの戦いは西洋人にとって本当に世紀の一戦だったとひしひしと伝わるように、西洋による侵略は肯定的にそれも偉大な功績として描かれ、それ以外の存在による西洋に対しての侵略は蛮行として極めて厳しく非難されています

ロシアについては 広大な草原と深い未開の森がどこまでもつづく北方の国なのだ。その地の農民は地主たちによっておそろしく残酷なやり方で、支配され、その地主たちは、王によってさらにひどいやり方で支配されていた(中略)彼らは、おたがい同士争い、おたがい同士殺し合うことで手がいっぱいだった

司教の叙任権が皇帝か教皇かどちらにあるのか、神聖ローマ帝国皇帝ハインリヒとグレゴリウス教皇との間で争われた結果生じたいわゆる「カノッサの屈辱」に関してはかなりのページを割いて詳述されています

そして教皇にゆるしを乞うた皇帝についてハインリヒの友人はこう言ったと記されています

「自分の立場がいかに不利であるかか悟ったハインリッヒは密かに賢い計画を考えついた。そして突然人々の予想に反して教皇のもとを目指して旅立った。この旅で彼はいっきょに2つの利益を得ようとしたのだ。1つは破門から解かれること。2つは自分が教皇の前に姿を現すことでもって彼が最も恐れた教皇と敵との同盟を妨害することであった」

なるほどこういう見方も出来なくもないのか、と。また後日談として

それはやがて本当の皇帝になったハインリッヒの死でもっても、また教皇グレゴリウスの死でもっても、なお終わらなかった。確かにハインリッヒはグレゴリウスを退位させることには成功した。しかしこの偉大な教皇の意思は時とともに実現されていったのだ。司教は教会によって選ばれ、皇帝はただその選出に同意するか否かを尋ねられるだけになった。皇帝ではなく教皇キリスト教世界の指導者になったのである

(あとスウェーデンの冒険王は頭がおかしいですね)

色々と気になる点がある本ではあるのですが、この著書の価値を不変にしているのが50年後のあとがきです。これに関しては読んでくださいとしか言えません

古代史から中世史を中心とした世界史を気軽に勉強したい方に特におすすめです